「日々ただ生きているだけで、なにかもの足りない気がする」
「このまま年を取って終わるのがなんとなく怖い」
そのような正体不明の不安を抱えるわたしたちにとって、朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』は、かなり効く一冊だ。
本作は、「生きがい」や「承認欲求」に振り回される現代人の生きづらさをエンターテイメント性の高い長編小説として、逃げ場なく言語化した作品だと言えます。
読み終えたときに爽快感より先に来るのは、「これは自分のことでは?」という静かにくる動揺かもしれません。
📕作品の概要とテーマ(ネタバレ最小限)
この物語の軸になるのは
- 植物状態で入院している 南水智也
- 彼の病室に通い続ける親友 堀北雄介
この二人の小学生時代から大人になるまでの時間。
そこへ
- 看護師
- 転校生
- 大学生
- テレビディレクターなど複数の人物の視点が重なり物語は「一人の人生」ではなく、社会全体の空気感を映し出していきます。
本作が投げかける問いは一貫している。
- 生きがいとは何か
- 認められたい欲求をどう扱うのか
- 意味のある人生を求めることは、本当に幸せなのか
これらの正解を示さずに、ひたすら描き切る構成になっている。
🕰️朝井リョウが描く「現代の居心地の悪さ」

「森の図書館」より写真引用
著者・朝井リョウは、『何者』で就活と自己演出の地獄を描いた作家です。
本作でもその強みが出ていて
- SNSで可視化される他人の成功
- 「意識の高い活動」をしている自分でいたい欲
- 社会的意義・正しさをまとった承認欲求
といった今の時代特有の息苦しさを容赦なく描き出している。
特に印象的なのは、
- 「人と違うことをして一目置かれたい」
- 「かつて評価された自分像にしがみつく」
そんな登場人物たちの姿が共感性羞恥レベルでリアルなことだ。
笑えないのは、どこかで「自分も同じことをしているかもしれない」と気づいているのかもしれない。
✒️読者レビューの傾向|ささる人としんどくなる人
本作の評価は、かなりはっきり分かれています。
⤴️好意的な声で多いのは
- 「今の時代のモヤモヤをここまで言葉にされた作品は初めて」
- 「自分のおぼろげな不安が文章になって外に出てきた感じがした」
- 「読みながら何度も立ち止まった」
⤵️一方で否定的・慎重な声もある
- 「中盤が重くて読むのがしんどい」
- 「登場人物の痛々しさに疲れる」
- 「気力がないと読めない」
この評価の割れ方自体が、この本が本気で刺さるテーマを扱っている証拠だと思います。
✅読むメリット①
「生きづらさ」を言語化できる
本作の最大の強みは、現代人が感じがちな「生きづらさ」を逃げずに描いている点です。
- 選択肢は多いのにどれを選んでも不安
- 何か意味のあることをしないといけない気がする
- 何をすればいいのか分からない
この正体不明の焦燥感を物語として外に引きずり出してくれる。
「自分だけがおかしいのではなかった」と思えるだけでも、読む価値は高い。
✅読むメリット②
承認欲求との距離感を考え直せる
作中には
- 社会問題に関わる自分を演出する人
- 人と違う生き方で評価されたい人
- 「正しさ」を武器にする人が次々に登場する。
それは滑稽で、時に痛々しいが読者は途中で気づく。
承認欲求そのものが悪いわけではない。
問題は、それに振り回されていることだ。
「誰に認められたいのか」「なぜそれが必要なのか」この問いから逃げられなくなる。
✅読むメリット③
物語としてのカタルシスと自己省察
終盤、これまで積み重ねられてきた人物たちの感情と選択が一気に収束していきます。
- ラスト数十ページが凄まじい
- 一気読みした
- 放心状態になったという感想が多いのも納得だ。
ハッピーエンドではない。
でも、かすかな希望と余白が残る終わり方が読み手に長く考え続ける時間を与えてくれます。
☀️こんな人に向いている
- 今の生き方にモヤモヤしている
- 「意味のある人生」を求めすぎて疲れている
- SNSや他人の評価に心を振り回されがち
- 自己啓発書が合わない人
- 軽い読書では物足りない人
逆に、気持ちがかなり落ちている時には無理に読まないほうがいいかも。
この本は、元気をくれるというより自分と向き合う体力を要求してくる小説だからです。
○✖️クイズ
Q. 『死にがいを求めて生きているの』が肯定している考え方はどっち?
「生きがいは、必ず見つけなければならない」 → ○ / ✖️
答え:✖️
本作は、生きがいを持てという圧力そのものが、人を苦しめると描いています。
意味を持たせすぎない生き方という視点が、物語全体を通して浮かび上がってきます。
❓Q&A
Q1. 重いテーマだけど読む価値はありますか?
A. あります。
軽いテーマではありませんが、「今の生きづらさ」を正面から描いた作品として、読む価値があります。
Q2. 朝井リョウ作品を初めて読む人でも大丈夫?
A. 問題ありません。
ただし、気持ちを揺さぶられる覚悟は必要です。
Q3. どの年代に一番刺さる?
A. 大学生〜30代に特に刺さりやすいですが、40代以降でも「承認欲求」や「生きがい」に向き合った経験がある人には十分響きます。
☀️まとめ|「しんどい」の正体を知りたい人へ
『死にがいを求めて生きているの』は、読みやすい本ではないが読む意味がはっきりしている本です。
- なぜこんなに疲れるのか
- なぜ意味を求めてしまうのか
- なぜ承認が欲しいのか
その答えを正解としてくれるわけじゃない。
ただし、考えるための言葉を与えてくれる。
もし今、うまく言えないけど何かがおかしいなと感じているのでしたら、その違和感が何かヒントを与えてくれる一冊になるはずだ。
✨関連リンク





コメント