相続税額の計算方法を具体事例で解説 ─ 妻あり/なし比較でわかる配偶者控除のド威力|公正なFPシリーズ第27回

公正なFPシリーズ

「相続税はどのように計算するの?」

相続税額を計算するにあたって、多くの人が誤解しているのが相続税は遺産を分けた金額に直接税率をかけるのではないという点です。

実際の計算では、法定相続分で仮に分けて税率を当てる”→合計→実際の取り分で按分という手順を踏みます。

この記事では、妻1人+子供2人という典型的な家庭を例に計算して「配偶者がいない場合」との比較を加えて相続税計算の基本を整理します。

👦相続税の計算ステップ(全体の流れ)

相続税額の計算は、むずかしそうに見えますが7ステップを順番に計算するだけです。

ステップ内容ポイント
遺産総額を出す不動産・預金・株式などの合計
基礎控除を引く家族構成で変わる
課税遺産総額を出す税金がかかる部分
法定相続分で仮分割妻・子の分を仮に分ける
速算表で税額を出す国税庁の表を利用
合算して全体の相続税を出す各人分を足す
実際の分け方に応じて按分実際の取り分で割り振る

⬇️相続税の速算表

No.4155 相続税の税率|国税庁

👩👦具体例:妻+子ども2人の場合(遺産9,000万円)

ここでは次の条件で計算します。

  • 遺産総額:9,000万円
  • 相続人:妻と子ども2人(合計3人)

① 基礎控除を引く

基礎控除は次の計算式です。

3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

👉 3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円

課税対象額:9,000万円 − 4,800万円 = 4,200万円

② 法定相続分で仮分割する

法律上(民法)の取り分(法定相続分)はこうなります。

  • 妻:1/2
  • 子ども2人:各1/4ずつ

したがって、

  • 妻の仮の分割:2,100万円
  • 子1:1,050万円
  • 子2:1,050万円

③ 速算表で相続税を仮計算

国税庁の速算表⬇️(税率と控除額)を使って計算します。

No.4155 相続税の税率|国税庁
法定相続分あたりの課税額税率控除額
1,000万円超〜3,000万円以下15%50万円

妻:2,100万円 ×15% − 50万円=265万円
子ども:1,050万円 ×15% − 50万円=107.5万円 ×2=215万円

👉 仮合計:265万円 + 215万円 = 480万円

④ 実際の分け方で按分する

実際、誰がいくら財産を受け取ったかにより最終的な税額を按分します。
ここでは、仮に法定相続分に相続として税額もそのままにします。

⑤ 配偶者控除を適用

配偶者には「1億6,000万円 or 法定相続分のどちらか多い額」までは非課税という特別控除があります。

今回の妻の取り分は、2,100万円なので全額非課税
したがって、妻の相続税額は0円になります。

✅ 結果まとめ

相続人税額(仮計算)控除後の税額
265万円0円(配偶者控除で全額非課税
子1107.5万円107.5万円
子2107.5万円107.5万円
合計480万円215万円(子どもの相続分のみ課税される)

3️⃣ 妻がいない場合(子ども2人だけで相続)

次に、妻がすでに亡くなっていて子ども2人だけで相続するケースを見てみましょう。

  • 遺産総額:9,000万円
  • 相続人:子ども2人

基礎控除は

3,000万円 +(600万円 × 2)=4,200万円

課税遺産総額:9,000万円 − 4,200万円 = 4,800万円

法定相続分:各1/2ずつ → 2,400万円ずつ
税率は20%、控除額は200万円。

👉(2,400万円 × 15%)−50万円=310万円
2人で 620万円 が相続税になります。

4️⃣ 妻の有無による相続税額の違い

ケース総額相続税
妻+子2人9,000万円約215万円
子2人のみ9,000万円約610万円

👉 妻がいる場合は、配偶者控除で大幅に節税できます。
ただし、将来の二次相続(妻が亡くなったとき)で子に再び課税されるため、トータルでの設計が大切になります。

5️⃣ FPからのアドバイス

相続税は、「節税テクニック」よりもまず全体像の理解が先です。
仕組みを知ることで「自分の家の場合はどうなる?」と冷静に考えられます。

  • まずは家族構成と資産額を整理
  • 相続税が課税されるとわかっていれば、相続が発生する前に税理士やFPに相談する
  • 二次相続まで見据えて、生前贈与や保険活用も検討する

難しい計算はプロに任せたとしても、家族で仕組みだけでも理解しておくことが安心につながります

📝まとめ

  • 相続税の計算は7ステップで整理できる
  • 配偶者控除の節税メリットは非常に大きい
  • 妻がいる場合といない場合では税額が数百万円変わってくる
  • 二次相続も含めてトータルで考えることが大事

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